初めに結論を言うと
- ヤスオに異常者が多いのは、私達がヤスオに異常な行動を期待しているから
である。
おそらくあなたは、この考えを聞いて
「なんでそうなるのかわからんが、確かに少し期待しているところがあるかも」
と思ったに違いない。
コレは公式でも同じで
自分がヤスオ・メインであることを母親にはどう伝えればいいですか?
といった記事がある。
ヤスオが異常者な理由は、
心理学的な視点ではなく、
社会学的な視点から見ないとわからない。
まずは、役割期待から説明していく。
この記事はパッチ11.9の時に執筆されました。
パッチ13.13時に書式のみリライト。
ヤスオと役割期待
私たちは、常に何らかの役割期待(role expectation)に応えて行為している」。
これぞ社会学的なものの味方の出発点なのだが……。
ただし、ここにいう役割期待は人々がいつも意識していると考えてはならない。
むしろ逆に、自らは主体的に行為していると思いこんでいても、実はだれとはなしの隠れた(implicit)期待に応えて行為している。
新自殺論 134Pより引用
精神病棟での演技
アーヴィング・ゴフマン(社会学者で今書いている話を提唱した人)が、
精神病棟で見たことを書く。
「なんと、精神病院には奇怪な症状をわざと演じて、新米の見習い看護婦が正常な行動だけを見て、がっかりしないように気を使う患者がいる」
患者の特異な症状の背後に
「施設職員の(隠れた)役割期待があるのでは?」
という話だ。
”期待”という言葉にはポジティブな響きがある。
しかし社会学に置ける”期待”は、
いい意味じゃない。
一般的に考えられるヤスオのイメージ
我々がヤスオに抱くイメージは、
ほぼヤスオへの期待と同じ意味となる。
- AFK率が高い(意外と1位じゃなかった)
- ヘタクソ
- すぐ怒る
- レーンで負ける
- ADメレー相手にフリートフットワークを入れるバカ
- いつも味方の時だけ弱い
おおよそネガティブなイメージばかりだ。
ポジティブなイメージなんて1つもない。
AFKする理由
プレイヤーがAFKするパターンを考えてみよう。
- 単純にLOLに慣れていないので続ける体力がない
- AがあったらB(AFK)すると決めている
- 役割期待に応えられないから
- 役割期待に応えているから
1 LOLは20分以上もするゲームなので、
試合に最後まで集中するだけで大変だ。
集中力のあるプレイヤーは、
ソレだけで一目置かれるほどである。
2 私だ。
4対5になったらプレイしないし、
味方にトロールが沸いてもプレイしない。
ペナルティを受けない方法で
AFKをすることにしている。
3 先程でいうと、グラガスなどだ。
グラガスは難しい上に
火力がないことで有名である。
実際、私も納得行くように動かせるまで、
40回はコケ続けた。
この場合の役割期待は
「試合中の味方は上手であって欲しい」
いくらゲームとはいえ、
全く応えられなければ、
普通は傷付くだろう。
4 ヤスオ。
非常に複雑である。
複雑なヤスオの役割
LOLを離れれば、
ヤスオ・メインズも普通の人間に決まっている。
LOL以外の時でも、
ヤスオが劣った存在であると期待する人は、
流石に少数だろう。
先程のAFK率で言えば、
グラガスやレンガーは上手に扱えれば(役割期待に応えられれば)、
プレイヤーが傷付いてストレスを受けることはない。
しかし
- ヤスオは劣った存在である
という役割期待に応えてしまうと、
ヤスオ自身が傷付く。
5〜10人くらいの、
少人数ゲームコミュニティで例えてみよう。
グループで下手な人はヤスオと同じ
LOLにこそ属していないが、
私も格闘ゲームでは
ゲームコミュニティに属していた。
そこではなんとなく、
- 下手なプレイヤーには下手であって欲しい
反対に
- 上手なプレイヤーには上手であって欲しい
という役割期待が、
確かにあった。
序列
「普段一緒に会話したりゲームをプレイしたりする人に、いつまでも下手であってほしい。
なんて考えるヤツいるのか? 人としてのライン越えてないか?」
と私も思うのだけど、
いつもLOLを5人でしているグループがあるとしよう。
グループでは大体序列、
すなわち
- 誰が偉いか決まっている
のが普通だ。
誰が誰にどんな態度を取ったりするか決まっていないと、
コミュニケーションコストが高すぎる。
なので誰がどんな態度を取るか期待するのは、
自然どころか必然である。
グループ内でヘタクソな人がメチャクチャ上手になった記憶がない
何事も最初から上手な人はいない。
誰でも知っていることだ。
だからLOLが上手な人も、
最初は鳥肌立つレベルで下手だった。
しかし、私はゲーム歴が長いにも関わらず、
グループ内で下手だった人が一番上手になった話は、
ただの1度も聞いたことがない。
LOLをしているグループ内で
「○○はレーン負けるのが仕事!!」
と毎試合言われている人が、
グループで一番上手になる話が少ないのは、
考えると不思議である。
役割期待に応えているとしか思えない。
つまり先程書いた
- 職員を失望させないためにわざと奇怪なことをする精神病棟の患者
と同じことをしている。
下手であることにも利点がある
どんなコミュニティーでも、
下手である人は周りを安心させたり、
和ませる役目をしている。
そういった人と一緒にプレイするのは、
基本的に楽しい。
心理的安全性が確保されるからだ。
バカにされたくないからレートを上げる行為について
LOLプレイヤーは、
こう考える人が多いらしい。
こういった人を見るたびに私は
- 「ソシャゲで見栄張るために課金するタイプでしょう?」
- 「復讐的な生き方だねソレ」
- 「自尊心がなければ、そう思うのは自然」
とか好き勝手言っているが、
こういった精神がないと
レートは上がらないかもしれない。
すなわちレートを上げる行為は、
人によっては下剋上に等しいわけだ。
※ ゲームの上達は、物の考え方を身につけるのに役に立つ。
しかし、今までグループ内で軽口を叩かれるのが役割だった人が、
LOL論を語ったり、
他の人に説教したりするポジションになったらどうだろう?
そのLOLコミュニティーは、
大きく乱れるのではないか?
良いか悪いかはともかく、
今までと違った感じになるのは間違いない。
下手であるとバカにされている人が上達するには、
どうしても友人達からの
- 期待を裏切る
必要があるわけだ。
このブログでの私の役割期待について
LOLコミュニティーには属していない私でさえ、
LOLプレイヤーからの役割期待を受けている。
- コンテンツを作成すること(記事を書くこと)
- 読者の体面(フェイス)を傷付け過ぎないこと
- 色々な切り口でLOLを語れること
私はあなたのことを全く知らないのだが、
こうして記事を書いている時点で、
あなたからの影響を大きく受けているわけだ。
しかもこの場合の知らないというのは、
- 名前
- OPGG
- Twitterアカウント
- 顔写真
を見ても知らないのである。
文字通り、
全く知らない人の影響を受けている。
ならば知人から向けられる役割期待というのは、
親しくても親しくなくても、
想像できないほど大きく受けるのだろう。
人間は距離の遠い人に向かって、
ネガティブな役割期待はしにくい。
なので、あなたも私も、
お互いをヤスオだと思っていない。
終わりに
- ヤスオに異常者が多いのは、異常であることを期待されているから
- 精神病棟の患者ですら、職員の役割期待に応える
- 役割期待に応えられないと体面(フェイス)が傷付く
- 劣った役割期待に応えても体面(フェイス)が傷付く
- 我々はどうしても役割期待に応えてしまう
ヤスオというのはつまり、
劣った役割を期待されている人だ。
世の中には上手なヤスオも多いが、
ソレらは劣った役割を期待されていないヤスオと言える。
結局我々は、
異常に人の視線や自分の立場、
見られ方を気にしてしまう。
なので同じ空間に属している人間に対しては、
例え友人であっても
「俺より劣った存在であって欲しい」
と期待してしまうことが、
多いのかもしれない。
人間は隣人に対して、
劣った役割を期待してしまいがち。