先日ストリートファイター6で、
サガットを使い始めた友人のプレイを見ていた。
友人は不知火舞でマスターランクだ。
目安としてはLoLで言うプラチナ4以上あるので、
全然初心者ではない。
ただ昔からゲームが上手じゃない人である。
何もサガットのコンボができない彼が、
最初に何から練習していたかというと
- しゃがみ弱P×2→【C】中タイガーアッパーカット
のヒット確認練習をしていた。
これをLoLで例えるならば、
アジールのレヴナントシャッフルに酷似している。
※ シュリーマシャッフルの本体が戻って来るヤツ。
1つ目は単純に難しいという点、
2つ目は失敗するとゲームが終わるという点だ。
ラオウのようにしゃがみ弱Pを連打し続ける彼のサガットを見て、
私は気づいてしまった。
ゲームが下手なタイプの彼はエンジニア思考であり、
ゲームが上手なタイプの我々は、
- レヴィ・ストロースがおっしゃっていた「ブリコラージュ」
なのだと。
この記事はパッチ25.15の時に執筆されました。
ブリコラージュ
レヴィ=ストロースのブリコラージュは、手元にあるあり合わせの材料や道具を使い、その場で臨機応変に新しいものを作り出す思考様式のことです。
彼は、あらかじめ目標や設計図を立てて最適な材料を揃える「エンジニア」の思考と、手近なものを寄せ集めて創造する「ブリコルール」(日曜大工)の思考を対比させました。
レヴィ=ストロースは、未開社会の人々が神話を作り上げるプロセスをこのブリコラージュに例え、神話は体系的な論理ではなく、既存の文化の断片を組み合わせて生まれるものだと論じました。この概念は、現代でも創造性や問題解決の方法論として広く用いられています。
上だとわかりにくいので、
もっと短く紹介しよう。
- エンジニアリング(技術者の思考):
- 明確な目標や設計図があり、そのために必要な材料を事前に準備する。
- 論理的かつ体系的に、ゼロから最適なものを作り上げることを目指す。
- 例:レストランの料理。メニューが決まっており、レシピに従って必要な食材を仕入れて調理する。
- ブリコラージュ(日曜大工的な思考):
- 手元にある道具や材料を眺めながら、何ができるかを考える。
- 決まった設計図はなく、状況に応じて試行錯誤しながら作り上げていく。
- 例:家庭料理。冷蔵庫にある残り物やあり合わせの食材を使って、その場でメニューを考え、おいしい料理を作り出す。
次にゲームが上手なタイプについて書く。
上手なタイプはコストの低い方法でスケーリングしていく
- エンジニアリング 明確な目標や設計図があり、そのために必要な材料を事前に準備する
- ブリコラージュ 手元にある道具や材料を眺めながら、何ができるかを考える
どちらのほうが素早く取り掛かれるか、
わからない人はいないだろう。
ブリコラージュのほうだ。
さらに一般的な傾向というか、
広く知られている常識として
- 熟練してない人の立てた計画は間違っているし穴だらけ
というものがある。
最低限テキストは読める必要はあるが、なんとなくプレイして、なんとなくプラチナやマスターになるのが上手なLoLプレイヤー像だと考えて欲しい。
今までにコーチングした人で最も下手な人もエンジニアだった
冒頭のサガットの友人の職業はエンジニアであり、
今までにLoLコーチングした人で最も下手な人もエンジニアだった。
- エンジニアリング 論理的かつ体系的に、ゼロから最適なものを作り上げることを目指す
- ブリコラージュ 決まった設計図はなく、状況に応じて試行錯誤しながら作り上げていく
おそらく2人とも上のプレイ方法を好み、
最初からそのプレイ方法を選択するのだろう。
ただLoLは慣れるまでは相当複雑であり、
大半のプラチナ4以上のプレイヤーにとって大変だったのは、
おそらく最初ゲームに慣れるまでだったはずだ。
ゲームに慣れる前に計画なんて立てようとするのは、
仕組み的に無理があるだろう。
普通の人が
- 自分が思う本当にオシャレな格好
をしたら、
ほぼ間違いなく奇怪な装いになるのと似ている。
ファッションはそれでいいと思うが、
とりあえず対戦ゲームでは勝てない。
人間は普段の脳みその使い方のクセが出てしまうのだろう。
下手なタイプは大量のタスクを消化するプレイを好む
「おそらく」という予想の話だ。
- 上手なプレイヤーは、とりあえず目に付いた効果の高そうな方法をこなしていく
- 下手なプレイヤーは、大量にタスクを並べて全部消化するプレイを好む
1 使用頻度の高い方法や、
費用対効果の高い方法のことだ。
2 LoLのジャングルで言えば、
- そのチャンピオン最速に近いタイムを出せるようになる
を真面目にこなそうとする人だ。
3;30秒で回れれば問題なく、
それ以上練習するのは費用対効果が高い。
ガングプランクの2連樽を安定させるのと同じで、
かなりの維持コストがかかる。
あまりにも習熟が必要とされるタスクは、
少なくともLoLでは
なるべく避けたほうがいい。
「これくらいあればいい」という基準は、LoLに限らず仕組み的に上級者じゃないとわからない。
終わりに
- 筆者は、ストリートファイター6をプレイする友人の様子から、ゲームの上手い・下手と、レヴィ=ストロースのエンジニアリングとブリコラージュの思考様式を関連付けて考察しています。
- 友人は、格闘ゲームの初心者ではないにも関わらず、サガットの習得において難易度が高く、失敗するとリスクが大きいコンボ練習から始めていました。
- この友人のような、計画的かつ体系的にゼロから最適な方法を目指す思考を、筆者はエンジニアリング思考と捉えています。
- 一方、筆者やゲームが上手いとされるプレイヤーは、手元にあるものを活用して状況に応じて試行錯誤するブリコラージュ思考を持っていると分析しています。
- ブリコラージュ思考は、手近なものから始めるため、学習や取り組みを素早く開始できる利点があります。
- 熟練していない人が立てる計画は、多くの場合間違っていたり、不十分であったりするという前提が述べられています。
- 筆者は、過去にコーチングした下手なプレイヤーも、エンジニアだったという経験を挙げています。
- 複雑なゲームでは、慣れていない段階で完璧な計画を立てようとするのは非効率であり、これはゲーム以外の分野(例:ファッション)にも当てはまると述べています。
- ゲームが上手なプレイヤーは、費用対効果の高い、目についたタスクからこなしていく傾向があります。
- ゲームが下手なプレイヤーは、効率を考慮せず、最速タイムを出すような習熟度の高いタスクを大量にこなそうとする傾向があると推測しています。
私は人にLoLを教える時は
- 最初にアタックムーブの方法、テキストを読む、など必須のことを教える
- 次にプレイヤーとしてのハビトゥス(気質や振る舞いのこと)を教える
という手順を踏む。
ピエール・ブルデューのディスタンクシオンである。
これは自分をオシャレに見せる文系的手法だが、
下手なタイプにそういう発想はないらしい。
とりあえず明らかに賢そうなのにゲームが下手なタイプは、
エンジニア的なタイプな人が多いなと気付いた。
そんな記事である。
でも私生活はエンジニア的なタイプの人のほうがしっかりしているし、
人生も良好な気がする。