スタンフォード大学のジョン・ペリー教授が提唱した「構造化された先延ばし」。
今回は、2011年にイグノーベル文学賞を受賞したこのユニークな考え方をご紹介しよう。
本にもなっているが、次の1ページを読むだけで内容は大体わかる。
「ああ、またやってしまった…」
足の踏み場を探すのも難しいほど散らかった部屋。脱ぎっぱなしの服が小さな山を作り、読みかけの本や書類が机の上に乱雑に積み重なっている。週末にやろうと決めていたはずの洗濯物はカゴから溢れ、本棚にはうっすらと埃が積もっているのが見える。「今日こそは片付けよう」「このままでは人を呼ぶこともできない」…頭の中では、そう強く認識しているはずなのに。
いざ、「よし、やるぞ!」と重い腰を上げ、掃除用具に手を伸ばそうとした、まさにその瞬間。なぜか視界の隅に入った、以前買って積んだままになっていた自己啓発書が気になり始める。「まずは、やる気を出すためにこれを読もう」「掃除を効率的に進めるためのヒントがあるはずだ」「これを読めば、きっとモチベーションが上がるに違いない」…そんな言い訳にも似た思考と共にページをめくり始めるのだ。
そして、書かれている「人生を変える習慣」や「成功者のマインドセット」に感銘を受け、マーカーを引いたりメモを取ったりしているうちに、本来の目的であったはずの部屋の掃除のことなど、すっかり頭から抜け落ちてしまう。あるいは、掃除とは全く関係のない別の調べ物を始めたり、他の知的活動に没頭してしまったりすることもあるだろう。
このように、本来やるべきである「部屋の掃除」という、ある意味で骨が折れ、達成感が見えにくいタスクを前にすると、私たちの心は不思議な逃避行動を選択しがちだ。気づけば、自己啓発書を読みふけったり、別の思考に夢中になったりと、本来の目的とは異なる、しかし何かしらの「活動」をしている感覚を与えてくれる別の行為に没頭してしまう。
これが、多くの人々を日常的に悩ませる「先延ばし癖」の一つの姿である。そして、この厄介な習慣は、単に部屋が片付かないという物理的な問題だけでなく、時間だけが過ぎていく焦り、達成できなかったことへの自己嫌悪、「自分はなんて意志が弱いんだ」という罪悪感、そして「どうせまたできないだろう」という無力感といった、ネガティブな感情の連鎖を引き起こす。多くの人々が、この「やるべきこと」と「やってしまうこと」のギャップに日々格闘しているのが現状であろう。
しかし、もし、そのどうしようもない「掃除から逃れたい」という衝動、その何かから逃避したいという強いエネルギーが、実はあなたの別の側面を豊かにするための「隠れた機会」になるとしたら、どうであろうか。もし、あの忌まわしい先延ばし癖こそが、逆説的に知識を深めたり、別の価値ある活動を進めたりする原動力になり得るとしたら?
本稿で深掘りするのは、まさにそのような逆転の発想に基づく画期的な概念、スタンフォード大学の哲学者ジョン・ペリー教授が提唱する「構造化された先延ばし(Structured Procrastination)」である。ペリー教授自身も先延ばし癖を持つ(と告白している)人物であり、その経験と洞察から生まれたこの戦略は、先延ばしという人間のどうしようもない性質を否定したり、無理に矯正しようとしたりするのではない。むしろ、その性質を巧みに理解し、戦略的に「利用」することで、結果的に多くの有益なことを成し遂げようとするのである。(たとえそれが、部屋の掃除ではなく、自己啓発書を読むことであっても!)
この記事では、提供された情報に基づき、この「構造化された先延ばし」とは一体何なのか、その驚くべき定義から、なぜそれが効果を発揮するのかという心理的なメカニズム、そしてペリー教授自身の驚くべき成功体験を含む具体的な実践例まで、詳細に解説していく。もはや、先延ばし癖に悩み、自己嫌悪に陥る必要はない。この記事を読み終える頃には、あなたもその厄介な衝動を、日々の様々な活動を豊かにするための、あるいは別の価値あるタスクをこなすための強力なエネルギーへと転換する方法を手にしているはずである。さあ、先延ばしを生産的な力に変える秘訣を、ここで共に学んでいこうではないか。
上の文章を極限まで端折って要約すると
- 問題: 先延ばし癖(重要タスク回避)と自己嫌悪は、多くの人の悩み
- 解決策: 「構造化された先延ばし」は、その衝動を他の有益な活動に利用する戦略
- 価値: 本稿でその方法を学び、先延ばしを生産的な力に変えるヒントを得る
あなたがプロか精神異常者じゃない限り、ゲームとは掃除中の漫画である。
「実行すべきことから逃避しているはずなのに、なぜかゲームはどんどん上達していく……」
LOLは難しいゲームなので、特別高レートじゃなくともプラチナ4もあれば、それは無意識のうちに「構造化された先延ばし」を実践している証拠となる。
これは、一見矛盾しているようで極めて効果的な時間管理術である。
対象がLOLでなければ、誰もが納得するはずだ。
しかし、なぜ「先延ばし」が「生産性」に結びつくのであろうか。
その驚くべきメカニズムを、3つの要点に分けて、解き明かす。
この記事はパッチ25.07の時に執筆されました。
「構造化された先延ばし」とは何か? – 先延ばしを味方につける逆転の発想
ペリー教授は、「構造化された先延ばし」を
- 「するべきではないこと(より重要なこと)をしないための手段として、重要度の低い有用なことをすること」
と定義している。
これは、単に時間を浪費する「通常の」先延ばしとは本質的に異なる。
構造化された先延ばしを実践する者は、最も重要だと(自身に思い込ませている)タスクを回避するために、リスト上の他の、より優先度は低いが十分に価値のあるタスクに積極的に取り組むのである。
考えてみるとよい。
もし本当に「何もしない」のであれば、それは単なる怠惰に過ぎない。
しかし、先延ばし癖のある人間は、何か重要なことを避けたいという強い動機があるからこそ、別の何かを実行しようとする。
ペリー教授自身も、この概念に関するエッセイを執筆しているまさにその時、論文の採点、教科書の注文、研究助成金の査読、博士論文の草稿の読み込みといった、より重要(だと彼が認識していた)なタスクを先延ばしにしていたと告白している。
エッセイ執筆という価値ある行為が、他の「もっと重要な」タスクから逃避するための手段となっていたわけである。
すなわち、構造化された先延ばしは、回避したいというネガティブな衝動を、他の有益な活動へのポジティブなエネルギーへと転換する巧妙な技術なのである。
驚くべきメカニズム:構造化された先延ばしは、なぜ機能するのか?
ポイント1:タスクリストの戦略的操作 - 「非実行」が「実行」を生む技術
ここで少し考えてみたい。
私たちは自分の行動を完全にコントロールできているだろうか?
例えば、LOLで初心者がよく口にする「ウェーブコントロール」。
これはミニオンの列を自分の意図通りに操作しようとする技術だが、実際には対面プレイヤーという予測不能な存在がいるため、完璧なコントロールは極めて難しい。
相手はこちらの意図とは関係なく、チャンピオンを倒そうと動いてくるからだ。
※ 2~3キルしてないとフリーズなんてできない。
これと同じように、私たち人間は、自分自身の行動すら完全にはコントロールできない。
たとえ「今日こそは〇〇するぞ」と固く決意しても、無意識の抵抗(ホメオスタシスや現状維持バイアスと呼ばれる、変化を嫌い現状を維持しようとする身体や心の働き)によって、つい他のことをしてしまったり、やる気が起きなかったりする。
つまり、「意志の力で行動を完璧にコントロールしよう」とすること自体が、多くの場合、LOLのウェーブコントロールのように、思い通りにいかない試みなのである。
しかし、ここからが「構造化された先延ばし」の重要なポイントだ。
自分の行動そのものを直接コントロールするのは難しくても、「どのタスクをリストに書き出し、どの順番に並べるか」という『タスクリストの設計』ならば、私たちは比較的容易にコントロールできる。
構造化された先延ばしは、このコントロール可能な「タスクリストの操作」を通じて、コントロールが難しい「実際の行動」を心理的に誘導し、結果的に生産性を高めようとするアプローチなのである。
いわば、直接行動を変えようとするのではなく、行動を取り巻く「仕組み(=タスクリストの構造)」をデザインすることで、望ましい結果を引き出そうとする戦略だ。
ステップ1:最重要(に"見える")タスクを、意図的にリストの最上位に配置する
- まず、自身が抱えるタスクをリスト化することが基本となる。
- ここでの最重要点は、リストの最上位に「最も重要そうであり、かつ最も気が重く、可能ならば回避したいタスク」を意図的に配置することである。
これすらできない人は、まずここまで文章を読んでないだろう。
なので100%の人間が容易にできると決めつけていい。
数分でやってみる
- ぶどう棚の邪魔なシートを切る
- ジムに行ってBIG3をする
- 記事を執筆する
- 首を鍛える
- 腹筋を毎日400回する
- 懸垂をする
- 水を4リットル飲む
- 畑の整理
まずタスクをリスト化して、次に最重要に見えるタスクを1番上に持っていく。
簡単だ。
5月までには切らないと行けない。多分3時間くらいかかる。
ステップ2:「最上位タスク」からの逃避衝動を、他のタスク遂行の原動力とする

- 多くの人間は、リスト最上位の最も厄介なタスクをつい後回しにしたくなる心理を持つ。これは自然な反応と言える。
- 構造化された先延ばしでは、この**「逃避したい」という心理を逆手に取る**のである。最上位タスクを先延ばしにするための「口実」や「逃避経路」として、リストの2番目、3番目にある、比較的取り組みやすく、それでも十分に価値のある他のタスク(例えば、未返信メールの処理、簡単な書類整理、情報収集など)に着手するのである。
- 考察すべきは、もし「これだけは絶対に回避したい」と思えるほどの重いタスクが存在しなければ、他の軽微なタスクに取り組む動機さえ生じにくい可能性があるという点である。
1 夏休みの宿題をしない気持ち。
毎朝30分すれば、最初の1~2週間で終わってたはずだ。
気持ちよく遊べたはずである。
2 掃除中の自己啓発書、手練れのLOLプレイヤーにとってのLOL。
3 立派な人間なら、「カエルを食べてしまえ」のように朝一番からトップタスクに着手し続けるのだろう。
ひとつ、プレイヤーの不思議な習性を書こう。
何年もゲームやってるのにドヘタクソなヤツ(週末プレイヤーは除く)を、物凄く嫌う傾向がある。
- 「趣味すらまともにできねえヤツ、物凄く忙しいか、物凄く能力が低いかのどちらかだろう。以前、哲学的ゾンビの話を聞いたことがある……」
ということを、健常発達者は容易に読み取るわけだ。
こういったことを社会学用語で
- 人が放出する表出(ギヴズ・オフ)
という。
SNSに書いたら怒られるに決まってるくらい不適切なことだが、マスター以上の100%がこういうことを思っている。
そしてもっと恐ろしいことに、これはLOLに限った話ではなく、あらゆる分野で共通している。
もちろんSNSで他人から質問されれば
「それぞれのペースでプレイするのがいいと思いますよ」
みたいな、たわけたことを言わなければいけないのだけど。
LOLの場合だと、毎日1時間以上プレイして3年やってもプラチナ4に到達できなければ、ドヘタクソ扱いされると考えていい。
この基準が厳しすぎれば、逆にソイツが周りから「芋野郎」扱いされてしまう。
人間は常にこういうオシャレバトルを繰り広げている。
ステップ3:最上位タスクは「見せかけ」が効果的である
- リスト最上位に配置するタスクを選定する際にはコツがある。それは、**「極めて重要かつ緊急に見えるが、実のところ、絶対的な締め切りがやや先であるか、多少の遅延が致命的な結果を招かない性質のタスク」**を選定することである。
- ペリー教授は例として、「数週間後に提出期限の論文執筆」や「来学期に使用する書籍リストの作成」などを挙げている。これらは重要に見えるものの、日々の細々とした業務と比較すれば、見かけ上の緊急性は低い場合がある。
- このような「見せかけの最重要タスク」を設定することにより、それを回避したい一心で、他の多くの重要な用事を効率的に処理することが可能となるのである。
1 本当に極めて緊急かつ重要なタスクを選定してはいけない。
本当に極めて緊急かつ重要なタスクこそ、トップタスクに設定せずに対処するのが、構造的先延ばしである。
2 私は小学校の時、夏休みの宿題は先延ばしにしていたが、学校のプールには毎日行った。
男性には1人の時間が必要ではあるものの、人と接する時間は多ければ多いほど良い。
学校のプールはLOLと同じ、ただの娯楽ではあるものの、小学生が1人で黙々と泳いでいるわけがない。
今思えば、夏休みの宿題よりも、友人たちと何時間も遊ぶほうが、人生にとっては実践的な意味で有意義だった。
もちろん夏休みの宿題を終わらせる手法を身に着けなければ、こういう記事もかけないのだけど。
3 「見せかけの最重要タスク」の設定は、自己欺瞞だ。
「最も実行したくないことから逃避したい」という人間の自然なエネルギーを、リスト下位にある他のタスクへの推進力へと転換する。これがタスクリストを用いた戦略的操作の第一歩である。
ポイント2:自己欺瞞の巧妙な活用 - 先延ばし癖は「技術」かもしれない
構造化された先延ばしを成功裡に運用するには、ある程度の「自己欺瞞」の技術が必要となる。
なぜ「自己欺瞞」が必要とされるのか?
- リスト最上位に配置したタスクが、「実際には今日実行せずとも問題ないかもしれない」と心のどこかで認識していたとしても、それを**あたかも「即座に取り組むべき、最重要課題である」と自身に信じ込ませる(あるいは、少なくともそう思い込もうと試みる)**ことが、この戦略の鍵となる。
- 本気で「回避したい」と思えなければ、他のタスクへのエネルギーも生まれにくいからである。
1 私は以前から、凄く不思議だと思っていたことがあった。
1万円払ってコーチングを受けに来る人の大半は、プラクティスでダミーの出し方がわからないのである。
LOLが上達したいと言っている、プラチナ4未満のプレイヤーは、
- ルーンを自分で組まない
- アイテムの効果を見ない
- スキルの効果を見ない
- ARAMやアリーナをまともにプレイできない
上の4つのどれか、あるいは全部できてないはずだ。
まず、初心者のうちから上達したいと思うだろうか?
LOLでのランクは、一般的に人に自慢できることじゃない。
なのでやったことがない人が、LOL上達したいと思うこと自体が不自然である。
2 今回記事を書いていて思った。
- LOLを「即座に取り組むべき、最重要課題である」と考えているから、LOLに関係することを先延ばしする
- LOL以外を「即座に取り組むべき、最重要課題である」と考えているから、熱心にLOLに着手する
のだろう。
初心者のうちから上達したいとは、なんだか不自然だ。
ただ「友人と遊ぶ時に自分1人だけヘタクソすぎる」という動機で受けに来る人は多く、その動機は意外と健全なようで上達しやすい。
先延ばし傾向のある人間ほど、この技術に長けている可能性
- ここで興味深いのは、ペリー教授の指摘である。彼は、「先延ばしをする人間は、元来『実行したくないこと』を正当化するために、様々な口実や理屈を考案することに長けている傾向がある」と述べている。
- つまり、先延ばし癖のある人間は、ある意味で「自己欺瞞」の技術が自然と高い水準にある可能性があるのである。
- 通常なら「欠点」と見なされがちなこの性質を、構造化された先延ばしでは、肯定的な力として巧みに利用する。
ある心的過程を意識することが苦痛なので、それについて考えないようにすること、単純に言えば、それが抑圧です。
寝ながら学べる構造主義
自己欺瞞については、上の記事を読むとわかる。
内田 樹の「寝ながら学べる構造主義」の内容が書いてある。
欠点を別の欠点で相殺する「高貴な行為」か?
- ペリー教授はユーモアを込めて、これを「一つの欠点(先延ばし)を別の欠点(自己欺瞞)で相殺するという、ある種の高貴な行為だ」とさえ表現している
- 自身に対してわずかな言い訳をしたり、思い込みを利用したりすることで、結果的に多くのタスクを達成できるのであれば、それは罪悪感を覚えるべきことではなく、むしろ賢明な戦略と評価できるであろう
1 大半の人間は、両方の欠点を持ち合わせている。
深刻なまでに。
2 タスクリストの最優先タスク(トップタスク)には、本当に生活に支障が出にくいけれど、心の底から緊急かつ重要だと思えそうなタスクを入れる。
そして、そのタスクを心の底から緊急かつ重要だと思い込む。
こういう嘘や欺瞞は、健常発達が得意とするところである。
自身の中に存在する「言い訳を考える能力」や「思い込みの力」を否定的に捉えず、他のタスクを推進するための肯定的な原動力として活用することが肝要である。
ポイント3:タスクは削減しすぎない方が良い? - 「逃避経路」の重要性
最後に、やや意外に思われるかもしれないが、「抱えるタスクの量」に関する要点である。
陥りやすい誤解:「タスクを減らせば負担が軽減される」は真実か?
- 多数のタスクを抱えていると、「これほど多くは…少しでも削減したい」と感じるのが一般的である。先延ばし傾向のある人間は特に、負担軽減を図ろうとタスクを削除したり、新規の業務引き受けを躊躇したりしがちである
- しかし、ペリー教授によれば、タスクを削減しすぎることが、かえって逆効果を招く可能性があるという
リストにはオープンリストとクローズリストがあって、前者は数がどんどん増えていくリストで、後者はその逆だ。
熟練したこと、例えば私にとってのLOLのゲーム中の手順などは、クローズリストのほうが機能しやすい。
しかしタスクなんて、容易にできないからこそ先延ばしにしてるわけだ。
朝飯前どころか朝トイレ前のことならば、もう終わっててリスト入りなんてしてないからである。
なぜタスクが多い方が有効なのか?:「逃避経路」の確保
- 構造化された先延ばしが円滑に機能するためには、ある程度の量のタスクが存在している方が望ましいのである
- なぜなら、多数のタスクが存在すれば、「最も実行したくない最重要タスク」から逃避するための「口実」や「逃避経路」となる、他の実行すべき事柄が豊富に見つかるからである
- もしタスクリストにあるのが、真に実行必須な数項目のみであった場合を想定してみよ。逃避先がなくなり、プレッシャーから結局何も手につかなくなる、という事態も起こり得る
1 LOLのゲーム中に行う行動は、100以上は軽いし、細かいパターンは何万通りもある。
※ スポーツやゲームは、そういう記憶のカタマリが何万個も必要。
しかしそんな量のタスクは負担すぎるし、書けばいいってものじゃない。
2 ゲームに限らず、物事にはたくさんの選択肢がある。
人間は良いと思ったものを選ぶわけなのだけど、心理的負荷が高いものからは逃げてしまう。
しかし2番目に心理的負荷が高いは、何故か1番目に心理的負荷が高いことよりも遥かに負荷が少ない。
実際の見積もり時間や難度は、そこまで変わらないはずなのだけど、何故か心理的負荷を感じない。
3 ちゃんと実行できるのであれば、何も問題はない。
しかしタスクリストなんて、人生で一度も全部実行できた試しがないわけだ。
だが10個も書けば、3個くらいは達成できる見込みがある。
「多忙な状況の方が、かえって他の雑務が捗る」という経験はないだろうか。それは、構造化された先延ばしが機能している証左かもしれない。タスクはゼロを目指すのではなく、適度な「逃避経路」を保持しておくことが生産性の鍵となるのである。
終わりに
- 構造化された先延ばしとは、最も重要だと認識しているタスクを避ける手段として、他の価値あるタスクに積極的に取り組むことである。
- この方法は、単なる怠惰とは異なり、「重要なことから逃げたい」という強い動機を他の活動へのエネルギーに転換する。
- 機能させる鍵は、タスクリストの最上位に意図的に「最も重要そうで気が重いタスク」を配置することにある。
- 人はリスト最上位の厄介なタスクを避けたい心理を持つため、その「逃避したい」気持ちをリスト下位のタスク実行の原動力として利用する。
- 最上位に置くタスクは、重要そうに見えても、実際には絶対的な緊急性が低い「見せかけ」のものである方が効果的に機能する。
- 構造化された先延ばしを成功させるには、最上位タスクが本当に最重要だと自身に信じ込ませる(あるいは試みる)ある程度の「自己欺瞞」の技術が必要となる。
- 先延ばし傾向のある人は、元々言い訳や理屈を考えるのが得意な場合があり、その自己欺瞞の能力を肯定的に活用できる可能性がある。
- ペリー教授は、先延ばしという欠点を自己欺瞞という欠点で相殺するのは、結果的に多くのことを達成できる賢明な戦略だと捉えている。
- 抱えるタスクが少なすぎると、最重要タスクからの「逃避経路」がなくなり行動が停滞する可能性があるため、タスクを削減しすぎるのは逆効果となり得る。
- ある程度の量のタスクが存在することで、最も避けたいタスクからの「逃避経路」として他のタスクが豊富に見つかり、結果的に多くの活動が促進される。
人は誰しも、「こうありたい」と願う理想の自分と、「実際の自分」との間にずれを感じるものである。これは能力が高いか低いかという話ではなく、むしろ社会的な場面で見せている顔と、ふとした時に現れる素の自分との違いのようなものである。
計画的に物事をこなし、常に冷静でいたい──そうした理想像を思い描きがちだが、現実にはどうであろうか。
重要な課題を目の前にすると、つい他のことに気を取られたり、面倒なことから目を背けたりしてしまうのが、多くの人間のリアルな姿であろう。本稿で掘り下げてきたジョン・ペリー教授の「構造化された先延ばし」は、まさにこのずれ、特に「実際の自分」が持つ厄介な性質──つまり、物事を後回しにしてしまう傾向や、それを自分の中で正当化してしまう心の動き──を前提としている。
そして、それを無理に変えようとするのではなく、逆手に取って利用しようとする、非常にユニークな考え方を提示するのである。
多くの自己改善法や時間管理術が、「理想的な自分」に近づくための努力や訓練を求めるのに対し、構造化された先延ばしは、「どうしようもなく後回しにしてしまう自分」という現実を受け入れた上で、その性質すらも活用してしまおう、という現実的な戦略と言えるだろう。
私たちは社会生活において、常に周囲から期待される役割(例えば「責任感のある人」や「計画的な人」)に応えようとし、自分を良く見せようと努めている。しかし、心の中では「やりたくない」「後回しにしたい」という気持ちと戦っていることも少なくない。
構造化された先延ばしは、この心の中の葛藤、つまり「重要なことから逃げたい」という気持ちを、別の活動へのエネルギー源に変えるのである。最も重要だと(自分に思い込ませた)タスクを避ける行動が、結果的に他の多くの用事を片付けることにつながり、周りからは「忙しい中でも多くのことをこなす生産的な人物」と見られる可能性すらあるのだ。
これは、ある意味で巧妙だが、人間の心理に深く根ざした現実的な方法である。
「自分は先延ばしするダメな人間だ」と否定的に自分を責める代わりに、「この後回しにしたい気持ちを、どうすれば他の行動への力に変えられるだろうか?」と考えてみる。
この視点の切り替えは、自己否定から自己受容への大切な一歩となり得る。完璧な理想像を演じ続けようとする精神的なプレッシャーから少し解放され、「実際の自分」の特性とうまく付き合いながら、それでもなお生産的である方法を見つけることができるのだ。
もちろん、構造化された先延ばしが全ての問題を解決する万能薬ではない。
本当に緊急で重要なことから永遠に逃げ続けることはできないし、自分を騙すことが単なる現実逃避になってしまっては意味がない。
しかし、自分自身をより深く理解し、日々のタスク管理に現実的なアプローチを取り入れるための一つの有効なツールとして、この考え方は多くのヒントを与えてくれるはずである。
もしあなたが、理想の自分と現実の自分とのギャップに悩み、先延ばし癖に苦しんでいるのであれば、ぜひ一度、この「構造化された先延ばし」の考え方を試してみるとよいだろう。
まずは、あなたのタスクリストの一番上に、最も気が重く、最も避けたいと感じる「見せかけの最重要タスク」を一つ、書き出すことから始めてみてほしい。
そこから逃れるために、あなたは驚くほど多くのことを成し遂げるかもしれないのだから。


とりあえず、私はLOLをトップタスクに設定したことは人生で一度もない。
ブログ記事執筆もないかもしれない(最近は確実にない)。
ティミーパワーゲーマー
カードゲーマーを自称するのであれば、ティミー、ジョニー、スパイクの概念は、日常生活にまで浸透しているのが当たり前だ。
- トップタスクを突破するアプローチを好む
- 遠回しな表現よりもストレートな表現を好む
ティミーは、こういった行為を好みがちである。
狡猾なタイプではないので、人生ではつまずきやすいだろう。
- 難しいトップタスクは先延ばしにしたり時間を使わない
- 代わりに他のタスクを何個も終わらせる
やはり完璧主義より、上善如水のほうが好ましいような気がする。
高名な養老孟司は、
「日本人は人生で個人的に決めたいことは少ない」
と言っていた。
個人がなく、周りの期待することを好む特性があるように思える。
今回の記事をカードゲーム風にまとめると、
- タスク処理においては、ジョニー的な感性が好ましい
となるだろう。
日々のタスク処理の方法を、もっと工夫してもいいころだ。