書評

ブルデュー『ディスタンクシオン』【趣味とは闘争である】

ブルデュー『ディスタンクシオン』講義

の8講まであるうちの、
1講の半分について
LOL風の感想、要約、解釈などを書く。

本当は1講すべて書きたかったのだけど、
長くなりすぎるので書けなかった。

ディスタンクシオンとは

「他者から自分を区別してきわだたせること」

みたいなニュアンスだと思って欲しい。

  • 区別化
  • 差別化
  • 卓越性

でもいい。

「趣味の社会学」

みたいな本なので、
ちゃんと読まないといけないわけだ。

かなり有名な本である。

この記事はパッチ13.24の時に執筆されました。

文化的ゲーム

  • 趣味はもっとも重要な争点の1つ
  • 趣味の良さという掛け金を獲得すべく動いている
  • 誰もが文化的ゲームに巻き込まれている

人間とは

「文化的ゲームによって、自分を他者からきわだたせている」

らしい。

たしかにこういった発想は、
耳にしたことがある。

あなたの地位と人脈は《スモールトーク》が決めている/ダンバー『ことばの起源』応用篇

上は高名な読書猿の記事だ。

ディスタンクシオンと、
少し似ているような気がする。

スモールトーク=無駄話

正統性による階層化

勝負事には勝者と敗者がいるものだが

「趣味めぐる闘争の勝者と敗者ってなに?」

と思うのが一般的な感覚だろう。

  • 上品/下品
  • 高尚/低俗
  • 簡単/難しい

こういった感覚があって、
みんなから見た場合

  • 趣味が良い
  • 趣味が悪い

などと言われる。

ここで1の、

  • みんな(より大勢の人)から趣味が良いと思われた趣味を好む人が勝者

コレが共通了解となる。

ブルデューはちゃんと調べて、

「音楽だとバッハが正統性がある」

みたいなことがわかるのだけど、
我々はバッハと言われても正直ピンと来ない。

そもそもブルデューのいた時代、
1979年のフランスの話だ。

LOLのボット(ロール)で例えてみよう。

文化的ゲーム、ボット編

2023/12/18 LOLALYTICS ボットのGamesの多い順番

エメラルド+の統計だ。

エメラルド3以上が上位10%以内に入り、
あなたも知っているとおりLOLは難しいゲームだ。

つまりエメラルド+は相当上手なのだけど、
この使用率の順番を見てあなたが思ったことは

「エズリアルとかカイ=サとか、全然カッコよくねえ。俺はカスタムでこんなボット使うの嫌だよ」

だろう。

ボットのマークスマンの場合、
カッコよさ、正統性、趣味の良さは

  • 操作が難しいこと
  • 気の利いた移動スキルがないこと
  • メインのダメージアウトプット方法がAAが主体であること

ここらへんが関係しているからだ。

1 これはマークスマンやLOLに限らない。

難しい=オシャレである。

2 アサシンだとあったほうが良いのだけど、
マークスマンはないほうがカッコいい。

漫画でもスピードキャラは主人公じゃないし、
人間にはそういう傾向があるのだろう。

3 ミス・フォーチュンでRのタイミングを測るようなプレイヤー。

マークスマンメインの人は、
そういうプレイヤーを嫌悪する。

最も極端な例を上げるとARAMのアッシュだろう。

パッチノート13.23より引用 ランダムミッドの調整

前々からWが不快であり、
ナーフされ続けていたのだけど、
あまりにも極端な変更だ。

正統性の高いマークスマンは

  • アフェリオス
  • ドレイヴン
  • カリスタ

この辺りだと考える人は多い。

プラチナ4もあれば、
こういったマークスマン感覚が身につく。

つまりエメラルド+のプレイヤーは
知っているけれどエズリアルを使っているわけだ。

LOLプレイヤーは、
男性相手に見栄なんて張らない。

エメラルド+(上位10%以内)は、ワナビー的な感覚が薄いってことだ。

三つの趣味世界

  • 正統的趣味
  • 中間的趣味
  • 大衆的趣味

マークスマンでいうと

1 ドレイヴン、アフェリオスなど。

カスタムで出したくなるチャンピオン。

2 ザヤ、カイ=サなど。

一般的なマークスマン。

3 エズリアル、ミス・フォーチュンなど。

ダメージスキルが多いと正統性が低いわけだ。

「自分を強化して、AAをする。コレがマークスマンだろ」

という感覚があるわけだ。

ARAMのアッシュのWがあそこまで毛嫌いされている以上、相手と戦う距離は近いほど正統性が高い傾向がある。

貴族の本質主義

  • 身体化された文化資本
  • 客体化された文化資本
  • 制度化された文化資本

1 知識や教養など。

2 書籍や絵画など。

3 学歴や資格など。

このブログは「客体化された文化資本」に分類されるのだろう。

文化資本は家庭環境と学校教育(友人関係)の両方で形成される

裕福な家庭の子供は、
幼少期に

  • ピアノ
  • 水泳
  • 空手

など習わされることが多い。

私の家庭はそうではなかったけれど、
家にはちゃんと昆虫、魚、恐竜などの図鑑、
アリとキリギリスのような昔話の本などがあった。

マリオみたいなアクションゲームばかりしていたけれど、
外で虫を捕まえるのも好きだった。

私は植物関連の仕事なのだけど、
幼少期の家に植物図鑑はなかった。

なので苦労している。

学校に入る前は家庭なので、それまでは家庭環境が大切となる。

貴族は貴族であるから貴族である

学校は文化資本を形成する場ではあるけれど、
有名大学卒じゃなければ、
いちいち何かを説明しなければいけない。

それ以外の高校や大学の場合、
地元じゃないとどんな学校かわからないはずだ。

つまり◯◯学校卒というのは、
基本的には制度化されていないのである。

普通の学校を出ている場合、
特別なパフォーマンスをしなければ、
自分を差別化できない。

いっぽう貴族や有名大学卒ならば、
他人に対してパフォーマンスを見せる必要がない。

そこに立ってるだけでいい。

なので貴族は本質主義なのだそうだ。

美的性向と価値転倒の法則

簡単に言えば、

  • 逆張り野郎

ってことだ。

先程のマークスマン画像だが、
LOLをしたことがない人からすれば、

  • 人気があるチャンピオンほど正統性がある(イケている)

と思うはずである。

そしてゴールド未満の人ならば

「なんでAAメインじゃないと正統性がないの? 
移動スキルや射程が長い攻撃があったほうが、戦いやすくない

とも思うだろう。

この文章を読んでいるあなたも、
書いている私も、
それは一般的な感覚であることに疑いない。

しかし実際には

「エズリアルメインです」

と言うプレイヤーに対しては

「ふーん」

という反応をする。

  • みんなが使いやすい、あるいは使っているものを否定する
  • みんなが使っていない、あるいは難しくて使えないものを肯定する

みたいな性向が、
我々には身についているわけだ。

自分のことを周囲に、

  • 物事を知っている、卓越された人間

だと思わせるには、

「難しいことをオシャレ」

と言うのは、
かなり単純で簡単な方法である。

工夫がない、とまで言える。

LOLのマークスマンは、既に価値の転倒が起こっているわけだ。
このように自分を集団の中で卓越化させていく。

大衆的ジャングル

LOLALYTICS 2023/12/18

コーチングの時に私が

「何か使いたいジャングルいる?」

と言って、

「ヴィエゴ」

と答えれば

「ジャングル全然わからないんだね」

と返す。

チャンピオンごとにどんなイメージがあるか、
いくつか挙げていこう。

  • リーシン お前が上手いのわかったから、別なの使え、サブ垢野郎がよ
  • グレイブス AAのエフェクト音、素晴らしすぎる
  • カ=ジックス 悪くはないけど、レンガーのほうがオシャレ
  • ジャーヴァンⅣ&ヴィエゴ それをオシャレだと思っているなら、君のジャングルは問題がある
  • ケイン 勝ちたがり
  • ノクターン 素晴らしいけれど、面白みにかける

ダイアモンド+は味方がちゃんとダメージを出すと言っても、
リーシンで勝率50%超えるなんて凄い。

※ この画面はALYTICSだと少し勝率が高く表示された気がする。50%切っているかもしれない。

一方ジャーヴァンⅣやヴィエゴは別に弱くないのだけど、
ピック率に比べると勝率が低い。

つまり

「ダイヤモンド+にもなって、ジャングラーの正統性の関係(オシャレ度)がわからないだなんて、よほどヘタクソなんだな」

と予測できるわけだ。

好きで使う、わかっていて使う、この場合まったく問題はない。
しかしオシャレだと思って使う場合は問題がある。
ジャングル観の無い人がジャングルをするのだから、味方の足を引っ張ることになる。

終わりに

  • 趣味はもっとも重要な争点の1つ
  • われわれは趣味の良さという掛け金を得るために動いている
  • われわれは文化的ゲームから逃れることはできない
  • 正統的な趣味を得ていると思われる人が文化貴族
  • 文化資本には3種類ある
  • 文化資本は家庭と学校で獲得される
  • 一般的な美的性向は、価値を転倒させている(逆張りされている)
  • エズリアルは使いやすいが、マークスマンとしては大衆的
  • ヴィエゴはスタンもありオールインもそこそこだけど、ジャングラーとしては大衆的

みんなが強く反応しない事柄に対して

「俺は面白いけど」

みんなが好きじゃないことに対して

「俺は楽しいけど」

みたいなことをして、
自分をきわだたせていくわけだ。

今回は例として、
ボットとジャングルのチャンピオンを挙げた。

しかしオレラ(LOLプレイヤー)の長期的な目標は、

  • LOLを日本で流行っている他の対戦ゲームより趣味の良いものにしたい

ではないだろうか?

例えば私はVSinger(歌が得意なVtuberのこと)が好きなのだけど、
実際はアイドル的なVSingerが好きとは言いにくい。

だからいつも、
Mori Calliopeとかヰ世界情緒とか言っている。

葬送のフリーレンはアニメ化する前からオシャレ漫画だったので、
私は他人に

「葬送のフリーレンが好き」

とか

その着せ替え人形は恋をするが好き」

とか言いまくっていた。

しかし

「サタノファニが好き」

とは、気心の知れた友人にしか言わなかった。

もしかしたら、このブログの役割は

  • LOLをもっと趣味の良いものだと思わせる

ことかもしれない。

そうすれば人口が増えるので、
この動きはプレイヤー全員にメリットがあるだろう。

-書評
-