あなたはなぜ、そのスキンを買ったのか。
ダメージも、スキルも、勝率も変わらない。
それでも新しいスキンが出るたびに、
財布のひもが緩む。
「見た目が好きだから」
——その一言で片付けてしまいがちだが、
本当にそれだけだろうか。
フランスの思想家ジャン・ボードリヤールは、
現代の消費行動を鋭く解剖した。
「人がモノを買うのは、その機能が必要だからではない。そのモノが持つ記号を買っているのだ」
と。
プレステージスキンを持つガレンと、
デフォルトスキンのガレン。
戦場での強さは同じだ。
しかし両者のあいだには、
確かに何かが違う
——そしてその「何か」に
リアルマネーが支払われている。
これはLoLだけの話ではない。
現代社会のあらゆる消費は、
使用価値ではなく記号価値によって動いている。
ボードリヤールはそう喝破した。
このブログでは、そんな消費社会の構造を、
私たちが毎日触れているLoLというゲームを入口に読み解いていく。
LoLのスキンに例えてカジュアルに書いていくが、
他のモノに置き換えて読むほうが楽しいかもしれない。
この記事はパッチ26.10の時に執筆されました。
使用価値・交換価値・記号価値
まずマルクスの2つの価値から書く。
- 使用価値 モノそのものの機能・効用。 靴なら「足を守って歩ける」、パンなら「腹を満たせる」。物質的・身体的な必要に応える価値
- 交換価値 市場でどれだけの値段がつくか。靴1足=米10kgのように、異なるモノ同士を等価交換させる抽象的な価値。資本主義批判の中心概念
空気より使用価値のあるものは存在しないが、
空気は人の手がまったくかかっておらず、
そこら中にある。
なので交換価値がないのである。
これがマルクスの資本論だ。
LoLに当てはめるなら、
デフォルトスキンのガレンは完全な「使用価値」の塊だ。
チャンピオンとして機能するし、勝てる。
ボードリヤールが加えた第三の価値
記号価値(valeur signe)
モノが社会的な意味・差異・地位を示す記号として機能するときの価値。
| 価値 | 問い | 例(LoLスキン) |
|---|---|---|
| 使用価値 | 何ができるか | チャンピオンを操作できる |
| 交換価値 | いくらか | 1350RP〜 |
| 記号価値 | 何を意味するか | 「このゲームに本気」「センスがある」 |
記号価値の3つの特徴
① 差異によって成立する
プレステージスキンの価値は、
それ単体では生まれない。
デフォルトスキンとの「違い」があって初めて意味を持つ。
全員がプレステージスキンを持つ世界では、
その価値は消えるだろう。
無料スキンも配布された瞬間は無価値だ。
しかし数年立つと、
まあまあ価値が出てくる。
② 使用価値を隠蔽する
課金スキンは「勝つため」として買われない。
むしろ逆で、スキンが強さに直結しないからこそ、
「余裕」の記号になる。
私がブドウの世話をする時だけ1000円の靴を履くのと同じで、
場と記号の使い分けが自然に起きている。
③ 欲望を事後的に生産する
「これが欲しい」と思う前に、
広告や文化が「これを欲しがるべき人間像」を先に作る。
新スキンのPVを見た後に財布を開いているなら、
欲望は自然発生したのではなく、
設計されたものだ。
メルヴィンとヴォーソス——LoL版の記号闘争
カードゲームの文脈に
「メルヴィン」と「ヴォーソス」という分類がある。
ゲームの仕組みそのものに興味を持つのがメルヴィン、
世界観やフレーバーに惹かれるのがヴォーソスだ。
LoLにもこの構図が存在する。
スキンを持たずデフォルトのまま高ランクにいる人間は
「ゲームに本気の人」
という記号を帯びる。
逆にスキンをたくさん持っている人には
「フレーバー寄り=実力より見た目」
という、
不当な偏見が向けられることがある。
私はTFTをずっとリバースプライトでプレイしているが、
それを指摘してくる人間は多い。
※ ちなみにTFTはヘタだ。
LoLでデフォルトスキンのガレンを使っていて何か言われたのは、
敵のマスター・イーから1回だけだ。
あまりにも男子中学生が丸出しだったので、
彼は敵味方からゲーム中こきおろされていた。
あの時の敵のシヴィアとタリック、
味方のユーミとは、
フレンドになっておけばよかったと今でも思う。
とりあえずスキンを持つことも、持たないことも、
すでに記号として機能している。
どちらを選んでも、
あなたは何かを「表明」してしまっているわけだ。
では、スキンを買うことは「悪い」のか
ボードリヤールの視点では、
現代の消費はほぼすべて記号価値によって動いている。
LoLのスキンだけが特殊なわけではない。
人に出す菓子は、
安くてうまいポテトチップスではなく、
記号価値の高いものになる。
椅子を選ぶ時、
機能だけで選ぶ人間はほぼいない。
使用価値だけで動く消費の方が、
現代においては稀だ。
問題があるとすれば、
設計された欲望に無自覚なまま動かされることだろう。
自分がなぜそのスキンを買うのかを一度でも考えたことがあるなら、
それはすでに「意識的な消費」だ。
あなたがプレステージスキンにRPを払う理由は
「見た目が好き」
だけではないかもしれないし、
それだけかもしれない。
どちらが正解かは、あなた自身にしかわからない。
「みんなが持ってないから欲しい」というのは、動機としては自然であるものの、悪いことだと私は考えるようになった。
終わりに
- リーグオブレジェンドにおいてスキンを購入しても、キャラクターの強さや勝率が直接的に変化することはありません。
- フランスの思想家ボードリヤールが指摘したように、現代の人々はモノの実用的な機能ではなく社会的な記号としての価値を購入しています。
- マルクスの資本論で説かれる使用価値とはモノの直接的な機能であり、交換価値とは市場においてつけられる価格を意味しています。
- ボードリヤールが提唱した第三の価値である記号価値は、モノが社会的な意味や他者との差異を示す役割を果たしています。
- プレステージスキンのような記号価値は単体で生じるものではなく、デフォルトスキンという他者との違いが存在することによって初めて成立します。
- 課金スキンがゲームの勝敗という実用性に直結しないからこそ、それを所有することは精神的または経済的な余裕を示す記号として働きます。
- 私たちが新しいスキンを欲しいと感じる欲望は自然発生するものではなく、広告や文化によって事前に設計されています。
- デフォルトスキンのままで高ランクにいるプレイヤーは、ゲームそのものに本気であるという記号を帯びることになります。
- スキンを多数持つプレイヤーは実力より見た目を重視していると偏見を持たれることがありますが、どちらを選んだとしても何らかの意思表示を行っています。
- 現代社会の消費はほぼ記号価値で動いているため、私たちが気をつけるべきなのは設計された欲望に無自覚にならないように意識を持つ必要があります。
LoLを初めたばかりの時は、
スキンを買っていた記憶がある。
それがいつのまにか、
まったく購入しなくなってしまった。
今では購入しないどころか、
スキンを引いても使わない。
これは社会学では役割期待と言って、
私の場合はメルヴィン的なキャラクターが求められているので、
そのような行為になっていく仕組みらしい。
TFTの文化はわからないが、
単純に下手なので、
それでリバースプライトが変に見えるのかもしれない。
本当に指摘されまくるので、
よほどおかしいのだろう。