初めに結論を言うと、ヤスオに異常者が多いのは、私達がヤスオに異常な行動を期待しているからである。
おそらくあなたは、この考えを聞いて
「なんでそうなるのかわからんが、確かに少し期待しているところがあるかも」
と思ったに違いない。
コレは公式でも同じで、
自分がヤスオ・メインであることを母親にはどう伝えればいいですか?
といった記事がある。
ヤスオが異常者な理由は、心理学的な視点ではなく、社会学的な視点から見ないとわからない。
まずは、役割期待から説明していく。
役割期待とヤスオ
私たちは、常に何らかの役割期待(role expectation)に応えて行為している」。
これぞ社会学的なものの味方の出発点なのだが……。
ただし、ここにいう役割期待は人々がいつも意識していると考えてはならない。
むしろ逆に、自らは主体的に行為していると思いこんでいても、実はだれとはなしの隠れた(implicit)期待に応えて行為している。
新自殺論134Pより引用
プラチナ2の人にコーチングした話も、この記事と同じ社会学の記事だ。
精神病棟での演技
アーヴィング・ゴフマン(社会学者で今書いている話を提唱した人)が精神病棟で見たことを書く。
「なんと、精神病院には奇怪な症状をわざと演じて、新米の見習い看護婦が正常な行動だけを見て、がっかりしないように気を使う患者がいる」
患者の特異な症状の背後に、施設職員の(隠れた)役割期待があるのでは? という話だ。
期待という言葉にはポジティブな響きがあるのだけれど、社会学に置ける期待は、あんまりいい意味じゃない。
一般的に考えられるヤスオのイメージ

我々がヤスオに抱くイメージは、ほぼヤスオへの期待と同じ意味となる。
- AFK率が高い(意外と1位じゃなかった)
- ヘタクソ
- すぐ怒る
- レーンで負ける
- ADメレー相手にフリートフットワークを入れるバカ
おおよそネガティブなイメージばかりで、書いていて改めて思ったのだけど、ヤスオに対するポジティブなイメージが1つもなかった。
※ つまり私自身も、ヤスオはクソであって欲しいと期待していることを意味する。正直な話を言うと、世界でも日本でもヤスオがAFK率1位じゃなくって、ガッカリした。
統計ではグラガスが1位ではあるものの、
「このグラガスって、味方のヤスオにキレてAFKしてるのかも?」
と少し疑ってしまったくらいである。
AFKする理由

プレイヤーがAFKするパターンを考えてみよう。
- 単純にLOLに慣れていないので続ける体力がない
- AがあったらB(AFK)すると決めている
- 役割期待に応えられないから
- 役割期待に応えているから
1は画像を見て分かる通り、LOLって20分以上もするゲームなので、試合に最後まで集中するだけで大変だ。
集中力のあるプレイヤーは、ソレだけで一目置かれるほど、集中力を保つのは大変である。
2は私だ。4対5になったらプレイしないし、味方にトロールが沸いてもプレイしない。
ペナルティを受けない方法でAFKをすることにしている。
3は先程でいうと、グラガスなどだ。
グラガスは難しくって有名で、実際私も納得行くように動かせるまで、40回はコケ続けた記憶がある。
この場合の役割期待は、「試合中の味方は上手であって欲しい」。
4はヤスオなのだが、非常に複雑。
複雑なヤスオの役割

LOLを離れれば、ヤスオ・メインズも至って普通の人間であるに決まっている。
LOL以外の時でも、ヤスオが劣った存在であると期待する人は、流石に少数だろう。
先程のAFK率で言えば、グラガスやレンガーは上手に扱えれば(役割期待に応えられれば)、プレイヤーが傷付いてストレスを受けることはない。
しかしヤスオは、劣った存在であるという役割期待に応えてしまうと、ヤスオ自身が傷付く。
5~10人くらいの、少人数ゲームコミュニティーで例えてみよう。
グループで下手な人はヤスオと同じ
LOLでこそ属していないが、私も格闘ゲームではゲームコミュニティーに属していた。
そこではなんとなく下手なプレイヤーは、下手であって欲しい。反対に上手なプレイヤーには、上手であって欲しいという役割期待が、確かにあった。
「普段一緒に会話したりゲームをプレイしたりする人に、いつまでも下手であってほしい、なんて考えるヤツいるのか? 人としてのライン越えてねえか?」
と私も思うのだけど、いつもLOLを5人でしているグループがあるとする。
グループでは大体序列、すなわち誰が偉いか決まっているのが普通だ。
誰が誰にどんな態度を取ったりするのか決まっていないと、コミュニケーションのコストが高すぎるので、誰がどんな態度を取るのか期待するのは、自然どころか必然的な行為なのである。
グループ内でヘタクソな人がメチャクチャ上手になった記憶がない

何事も最初から上手な人なんていないのは、あなたも当然知っているだろう。
だからLOLが上手な人も、最初は鳥肌立つレベルで下手だったはずなのだが、私はゲーム歴が長いにも関わらず、グループ内で下手だった人が一番上手になった話は聞いたことがない。
LOLをしているグループ内で
「○○はレーン負けるのが仕事!!」
とか毎試合言われている人が、グループで一番上手になるような話が少ないのは、良く考えると不思議である。
役割期待に応えているとしか思えない。
つまり先程書いた、職員を失望させないために、わざと奇怪なことをする精神病棟の患者と同じことをしている。
バカにされたくないからレートを上げる行為について
LOLプレイヤーは、こう考える人は多いらしい。
こういった人を見るたびに私は、「ソシャゲで見栄張るために課金するタイプでしょう?」とか「復讐的な生き方だねソレ」とか好き勝手言っていたが、こういった精神がないとレートは上がらないかもしれない。
すなわちレートを上げる行為は、人によっては下剋上に等しいわけだ。
今までグループ内で軽口を叩かれるのが役割だった人が、LOL論を語ったり、他の人に説教したりするポジションになったらどうだろう?
そのLOLコミュニティーは、大きく乱れるのではないか?
ソレが結果的に良くなるか悪くなるのかわからないけれど、今までとは大きく違った感じになるのは間違いない。
下手であるとバカにされている人が上達するには、どうしても友人達からの期待を裏切る必要があるわけだ。
このブログでの私の役割期待について
LOLコミュニティーには属していない私でさえ、LOLプレイヤーからの役割期待を受けている。
- コンテンツを作成すること(記事を書くこと)
- 読者の体面(フェイス)を傷付けないこと
- 色々な切り口でLOLを深く語れること
私はあなたのことを全く知らないのだが、こうして記事を書いている時点で、あなたからの影響を大きく受けているわけだ。
しかもこの場合の知らないというのは、名前を言われても、OPGGを見ても、Twitterアカウント見ても、知らないのである。
文字通り、全く知らない人の影響を受けている。
ならば知人から向けられる役割期待というのは、親しくても親しくなくても、想像できないほど大きく受けるのだろう。
終わりに
ヤスオというのはつまり、劣った役割を期待されている人だ。
世の中には上手なヤスオも多いが、ソレらは劣った役割を期待されていないヤスオと言える。
結局我々は、異常に人の視線や自分の立場、見られ方を気にしてしまう。
なので同じ空間に属している人間に対しては、例え友人であっても
「コイツやっぱ、ちょっと俺より劣った存在であって欲しい」
と期待してしまうことが、多いのかもしれない。
人間は隣人に対して劣った役割を期待してしまいがち。